個人の場合については消費者を一方的に不利益に陥れるような契約条項は無効となるわけですが、ここで注意したいのが「消費者」という定義。
同法二条一項では消費者を「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)をいう」と規定されていますから、例えば法人の場合は消費者契約法の適用を受けないことになります。
同様に個人事業を行っている人が事業に直結するものとして行うような賃貸借契約、例えば事務所として借りたというような場合にも消費者契約法の守備範囲からは外れることになります。
したがって、特約で「自然損耗は賃借人負担」とされていても個人の場合と異なり消費者契約法で無効を訴えるということはできません。
このあたりは不合理といえば不合理ですが、結局法人は業に関して借りている場合がほとんどで、個人が単に居住用として借りているような場合とは異なります。業務に関することについてはきちんと自己責任の下で注意しているのが当然であり、契約自由の原則をそのままあてはめてよい、ということになるのだろうと思われます(個人事業主についても同じ)。
ただし、消費者契約法10条規定は民法1条2項の原則を具体化したものですから、あまりにも一般常識からかけはなれるような形の特約が存在する場合には直接民法1条2項を理由に特約無効を訴えることは可能でしょう。
グレードアップのためのリフォームの費用を全面的に請求するとかの場合には法人や個人事業主であったとしても途は残っていると思われます。