敷金返還請求の3つの方法

敷金返還トラブル委員会
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敷金を取り返す方法としましては、以下のものがあります。


内容証明


交渉よりは不穏当ですが、当事者間で解決を図る方法の一つが内容証明です。

内容証明郵便は郵便物の差出日付、差出人、宛先、文書の内容を第三者である日本郵便(民間移行したため、総務大臣が任命する郵便認証司が認定している)が謄本により証明する郵便で、意思表示があったことが第三者に証明されることでトラブルの存在が明らかになるため、受けた側(ここではもちろん敷金返還請求をされた側=不動産業者)に心理的プレッシャーがかかることで、敷金返還請求に応じやすくなる期待があります。

内容証明については郵便局以外に他人を介在することがなく、また内容証明自体は2000円程度で発送できるので負担が小さいのがメリットです。

逆に内容証明自体には何らの効果もないため、無視を決め込まれると発送したことが証明される以外には効果がないのが難点です。

内容証明はご自身で行うことも可能ですが、内容証明は読んで文字のごとく内容を証明する効果があるため、法的な知識なしに安易に雛型などで送られますと、自分にとって不利なことも証明してしまい、結果的に敷金返還の妨げになることもありえます。

また、相手も不動産のプロですから法律家ではない個人からの内容証明は無視する傾向にあります。いくらでも言いくるめることが可能だからです。

大体このような形で請求することになると思われます。

敷金返還請求書

去る平成16年3月20日、私はA物件の賃貸借契約を締結し、敷金として○万円、保証金○万円を支払いました。

その後平成20年3月30日、私はA物件を明け渡しましたが、その際敷金が1万円しか返ってきませんでした。

それについて問い合わせたところ、御社はカーペットの張替えに○万円、クロスの張替えに■万円かかると主張していました。

しかしながら、国土交通省のガイドラインに照らしてみると、カーペットを故意・過失で汚したことはなく、この費用は御社の負担になると思われます。

また、クロスについては確かに一部ジュースをこぼし、またたばこなどで黄ばみもできましたが、タバコによる黄ばみは通常使用によるものですし、ジュースをこぼしたのは私の過失ながら4年間の経年劣化を考えますと全額を私が負担するのは理不尽であると考えます。

従いまして、カーペット、クロス分について合計○万円を7月1日までに返還していただきたいと思います。返還いただけない場合は法的措置も考えておりますのでご了承ください。

上記はあくまで参考例ですので、このまま使用して不利にならないように事前にご相談ください。

調停

当事者間だけでは解決を図りきれない場合には第三者に入ってもらうことになります。

調停も裁判所による民事調停や宅建協会や、あるいは法律家による仲裁など様々な形があります。民間による調停はそれぞれの専門家が間に入ってとりなす、ということになります。民事調停についても原則は同じです。

調停手続きは、調停主任をつとめる裁判官と、調停委員と呼ばれる者2名(弁護士・司法書士・行政書士等の法律専門家や各種団体の有識者・学者の方など、一般社会の中から選出される)が紛争当事者の間に入り非公開の場で話し合いを進め、当事者が互いに譲歩しあって合意を形成し紛争を解決する制度です。

支払督促

内容証明より強めに一方的に主張できる制度として支払督促が存在します。

支払督促というのは金銭、有価証券、その他の代替物の給付に係る請求について債権者(この場合は賃借人)の申立てにより、その主張から請求に理由があると認められる場合に、支払督促を発する手続であり,債務者(賃貸人)が2週間以内に異議の申立てをしなければ、裁判所は債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付さなければならず,債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができる制度です。

簡単に言うなら、返してほしい側が裁判所に行き、「こういう理由で敷金を返してほしいから支払督促を出してほしい」と申し立て、その理由がおおむね適当であると裁判所が認めれば相手に「敷金を返してあげなさい」という督促をします。相手が異議を申し立てれば訴訟に移行しますが、2週間以内に異議申立をしなければ督促によって強制執行をすることが可能となります。

非常に便利な制度ではありますが、異議を申し立てれば裁判になってしまう点や、支払督促を出す裁判所は相手の住所地を管轄している裁判所ですので遠隔地にある場合には結構手間がかかるなどです。

訴訟

以上の場合に解決しなければ最終手段、裁判でカタをつけるということになります。

訴訟にも通常訴訟と少額訴訟の二通りがあります。

●通常訴訟

一般の裁判で、訴状を提出して裁判所でそれぞれの主張をぶつけ合うことになります。

大抵の場合は判決まで行くということはなくて、裁判所による和解勧告などで和解が図られることになりますが、判決にせよ和解にせよ確定力は絶対的で一番確実な方法です。反面、訴えを起こすための費用や弁護士費用、また、相手も裁判に応じた場合には裁判所に出頭する必要もあり、負担も大きくなります。

●少額訴訟

通常訴訟では労力も負担も大きくて仕方がない、という観点から小さな事件については簡易に済ませよう。そういう考えから生まれたのが少額訴訟です。

少額訴訟は60万円以下の金銭支払いを求める訴えについて、その額に見合った少ない費用と時間で紛争を解決する訴訟制度です。当初は30万円までとされていましたが、需要の多さから平成15年に60万円まで拡大されました。

尚、トータルで60万円を超える場合でも60万円までと絞れば少額訴訟とすることができます。例えば敷金として90万円をおさめていて、「本当は80万くらいは返ってくると思うが、普通に裁判をするのは面倒だからせめて60万円は返してほしい」というような場合には少額訴訟とすることができます。

少額訴訟は、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に訴えを起こします。訴訟を提起すると原告・被告ともに準備をしますが、一回で解決まで至るため、準備は通常訴訟の場合よりも気をつけなければなりません。

通常訴訟との明確な違いとしては、

  1. 原則として最初の期日で判決が出されます(なお、被告が望む、若しくは裁判所が1回で解決を図れない事件と判断すれば通常訴訟に移行する)。尚、必ずしも判決となるわけではなく、和解が成立することもあります。

  2. 同じ簡易裁判所に起こせる少額訴訟は一年に10回までとなっています。これは制限をかけなければ金融業者などが何度でも起こす可能性が考慮されるからです。この回数を偽って申告した場合には処罰の対象となります。

  3. 判決に不満があっても控訴は出来ません。少額訴訟は簡易に済ませてしまおうという考えのもと生まれたものですから、二回も三回もやっていたのでは意味がなくなるからです。

があります。

簡易迅速な解決を図るのに便利で敷金返還訴訟の大半はこの少額訴訟によって行われています。

少額訴訟を起こす際の手数料は、


少額訴訟で請求額

10万円

20万円

30万円

40万円

50万円

60万円

手数料

1000円

2000円

3000円

4000円

5000円

6000円


ですので比較的手頃です。

尚、できるだけ解決させようという意図から、分割払いや支払の猶予が認められる場合もあります。

できれば、裁判にもちこむことなく解決させたいものですが、相手との隔たりが大きいなどある場合にはいきなり訴訟にもちこむことも少なくありません。

法律家のアドバイスなどを受けて行動するのがいいでしょう。

不動産業者の実情

敷金返還を渋るのは最近ではどの業者でもありがちという話で、法律家が交渉すればある程度は譲歩するのが普通になっています。

それも何か正直者がバカを見るようであまりいい話ではありませんが、妥協を用意している不動産業者ならまだ救いはあります。

しかしながら、世の中には全く妥協をしない、あからさまに不当請求をしてくるような不動産業者も存在しています。交渉の余地すらないあまりに悪質な不動産業者については単に敷金返還という範疇で捉えるのではなく、そもそもこんなところは不動産取引業者としてどうなのだ、というような争い方もあるでしょう。

宅地建物取引は自由にできるものではなく、都道府県知事・もしくは国土交通大臣の免許を受けなければなりません。もちろん、免許を得ずにやっていればその時点で違法ということで処罰の対象となります。免許を所持していたとしても名称、所在地、代表者についても一致していなければならず、これらが違っていても処罰の対象となりますし、不当取引の強要も免許停止などの理由の一つとなっています。

敷金返還という範疇を超え、考えられない額をリフォーム代などとして請求されたりした場合には相手の免許番号などを調べて(こうした情報は公開されていますので、それぞれの都道府県庁の管轄部署で調べることができます)、場合によれば抗議に行く、一報を入れるということも一つの方法として考えるのがいいかもしれません。

無論、調べてみれば代表者が違うとか住所が違うとか、免許されている事項と実際とが異なっている場合もありえますが、それもしっかり通報しましょう。

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