借主の故意過失(善管注意義務違反)、が原因で、修繕が必要になった場合でも、その全額を負担する必要がない場合が多いことは今まで見てきたとおりですが、そもそも、個々の事例で借主の負担すべきものなのかどうかをガイドラインの基準に即してみていきましょう。
タバコで壁紙が変色したので、壁紙張替えの工事費を負担して欲しいと言われました、確かにタバコは吸いますが、普段は会社ですし、家で吸った本数はそう多くはありません。それでも張替えの費用を負担しなければなりませんか?
近頃、肩身のせまい喫煙族ですが、喫煙自体は、用法違反でも善管注意義務違反でもないと考えられています、ですから掃除で落とせる範囲の汚れならば通常損耗の範囲内とされています。ただし、ヘビースモーカーで、掃除では落とせない程汚してしまった場合は、請求されても仕方が無い事になります。
尚、クロスについては6年で、残存価値が10%となるような直線(または曲線)を想定して負担割合を算定することになります。
立会いのとき、貼ってあったポスターの跡が残ってしまったから、クロスの張替え工事代を負担しろと言われましたが、負担しなければなりませんか?
通常の生活に伴う損耗の範囲とされ、負担を負う必要はありません。いくら善管注意義務があるからといって、ポスターやカレンダーも貼れないのであれば、窮屈すぎますよね。
忙しくて、掃除が行き届かなかった点はあるのですが、台所の油汚れがひどいので、その分のクリーニング代を請求すると言われましたが、これは通常の損耗に入らないですか?
程度にもよりますが、使用後の手入れが悪く、油が付着しているような場合は、通常の損耗を超えると判断されることがあります、ひどくならないうちに掃除をしましょう。
クロスを一部破いてしまいましたが、同じ柄のクロスが今は造られていないので、一部屋分張り替える必要があると言われました、同じ柄がない場合はそのような事も仕方ないのでしょうか?
クロスに限らず、ふすま紙などでも「柄が合わなくなるから全体を張り替える費用を負担してくれ。」という大家さんが結構いるようです、断り無く全体の張替え費用を見積書に載せてくることもあるようですが、借主が負担しなくてはならないのは最小範囲です、柄が合わなくなるからといって、全部の張替えを対象に請求するのは過剰請求になります。
冷蔵庫の背面の部分のクロスがヤケているので、張替えの費用を負担しろといわれています、これは通常損耗に入らないですか?
入ります、ですから、毎月払っていた家賃で負担済みと考えられます。テレビや冷蔵庫は一般な生活をおくるうえでの必需品と考られています
私は、引っ越してきたとき天井に直に取り付ける照明器具を持参し、それを取り付けて使っていましたが、退室の際、照明器具の跡を直す費用を請求されました、照明器具は生活に必要なものですから通常損耗だと思うのですが?
確かに照明器具は生活するうえで必要不可欠なものですが、あらかじめ設置された照明器具用コンセントを使用しなかった場合は通常の損耗を超えると判断されることが多いようです、直付シーリングなどの取付けは、確認を取ってからの方が無難ですね。
カーペットにカビがあり、張替えを要求されました。子供がジュースをこぼした記憶はありますが、生活していれば仕方の無いことだと思うのですが、通常損耗になりませんか?
ジュースをこぼすなどのことは、確かに生活していれば起こりうることですが、その後の手入れ不足で、カビが生えたような場合は、賃借人の責任とされることがあります、放置せず、マメに対処してください。
引越しとは関係ないのですが、ガス釜が壊れて、取り替えなければならなくなりました、引っ越してきたときすでに中古の設備だったのですが、取替え費用の半額を負担してくれと言われています。負担しなくてはならないのでしょうか?
機器が耐用年数を超えているような場合、賃借人に責任はないと考えられます。
退去する際に、鍵の交換費用を請求されました、鍵をなくしたわけではないのに、安全のために交換すると言うのですが、負担しなければならないのでしょうか。
安全のためというのは、いわば次の入居者のための準備ですから、賃借人が負担しなければならないものとはいえません。尚、鍵を紛失してしまったような場合は、交換費用は賃借人の負担となりますが、この場合、経過年数は考慮されません、ですから、全額賃借人の負担となりますのでご注意ください。